すべての人にアートを

仙台を拠点に活動するNPO法人アートワークショップすんぷちょの活動ブログです。

シンプルなことを重ねていってつくるダンス創作、レイチェル・スミスさんが仙台に残していったこと

8月の夏真っ盛りな某日、6日間におよぶダンスワークショップが終了しました。
講師はスコットランドからこの企画のために仙台に来てくれたレイチェル・スミス女史。
仙台駅のステンドグラス前で初めて会った彼女は、大きな荷物を二つ抱えて、足元はビーチサンダル!
周囲の日本人より頭一つ分大きな彼女をすぐに見つけることができました。この瞬間、これからどんな出会いや学びが待っているのかと私のわくわくは絶好調なのでした。
       
この6日間のレイチェルとたくさんの参加者(のべ150人)との出会いや、定員オーバーぎみの大盛況だった一般参加者を迎えたオープンデイ、最終日のパフォーマンスショーイングのこと、そしてレイチェルのワークショップから学んだこと、などなど、みなさまにお伝えしたいことは山ほどありまして(なんせ6日間やりましたから)、少しずつご紹介していきたいと思います。

 

■複雑なワークショップのオーダーに応えてくれたレイチェル
今回、すんぷちょからお願いしたワークショップは3種類ありました。

・9月の舞台公演を見据えたパフォーマンスの原型を作る創作ワークショップ
・コミュニティダンスなどを学びたい人向けのファシリテーター養成ワークショップ
・一般のどなたでも参加できるワークショップオープンデイ


せっかく来てくれるなら、その後の舞台公演に繋がるものにしたい、でも来てもらっておわりではなくて、仙台でも同じような活動を展開できる人材を増やしたい、そしてたくさんの人にレイチェルのワークショップを体験して欲しい!!これ、ぜんぶ、盛り込みたい!!という欲張りな思いが生んだ今回の企画。
その一つ一つがとても意義深いものとなりました。

前半は7月23日~25日の3日間、その後一度沖縄の児童演劇フェスティバルにレイチェルは参加し、8月2日~4日にまら仙台に戻ってくるというスケジュールで行われました。

ワークショップではとにかくたくさんのシアターゲーム、コミュニケーションゲームをやりました。
レイチェルはそのゲームのストックをゲームバンクと呼んでいて、それらのゲームは目的ごとにカテゴライズされます。

アイスブレイク/ウォームアップ/集中/課題解決/チームワーク/スキルの導入/即興

覚えているだけでも30個近くのワークを行いましたが、それら全てが上記のカテゴリーのいづれかに属し、ワークを組み立てる上で重要な要素となっているのでした。

  

こどもたちに大人気だった「サス!サス!バン!」

ワークショップ後のアンケートを見て、子ども達に一番人気だったワークがこの「サス!サス!バン!」
参加者が全員丸くなって内側を向き、ゲームを始める人が右か左の人に「サス!」といって手を自分の前で勢い良くすり合わせます。サス!を受け取った人は同じ方向に「サス!」を回していくか、「バイーン!」と身体で跳ね返して、まわしてきた人に返すことができます。
この基本的なルールに少しずつ新しいルールをレイチェルは加えていって、最終的には4つのルールを覚えてゲームを楽しみました。このゲームのカテゴリは、アイスブレイクやウォームアップ。モノがなくても見えないバトンを全員で回すような感覚と、自分に回ってきたときに瞬時に反応しなければならない緊張感、そして求められる集中力が、このゲームの面白さでした。ワークの前半にやることで、チームの緊張を解し、次のステップへ進める助走になっていました。

  


■ペアワークをたくさんやること
レイチェルのワークショップで印象的だったことの一つに、2人1組のペアになってやるワークが多かったことがあります。例えば「ミラー」というワーク。すんぷちょでファシリテートしてくれる西海石みかささんや渋谷裕子さんもよくワークの中で使う1つです。
初めは2人が動かずその場でミラーをやるのですが、次のステップでは1直線に進みながらミラーをやりました。たくさんのペアが次々とミラーをやりつつ前に進んでいく姿を客観的に観ると、何か原始的な祭事の行列にも見えるし、自然の中にある流動的な姿にも見えるから不思議です。
パフォーマンスする側が何か意味合いやテーマを意図していなくても、観る側が勝手に意味を探って、見出していくという体験がとても面白いと思いました。

相手の手と自分の手を合わせてそこを起点に自由に動いていくハンドダンス、お互いに相手の隙間を自分の身体で埋めるダンス、などペアワークをたくさんやりました。これらは、レイチェル以外のダンスワークショップでも良く行われるワークなのですが、同じワークでも少し昨日とは違う指示を与えてみたり、進む方向を変えてみたり、2人が4人になったり、バリエーションが変わることで、どこまでもワークに深みが出てくることが実感としてありました。
ペアになる人が変わると、2人の関係性も当然ですが変わります。それがダンスにも表れていて、参加者の動きのバリエーションを増やす役割も果たしていたのではないかと思います。

  
一つのワークのバリエーションを増やしていくファシリテーションについてもう一つ、ポイントがありました。
参加者から「今回もそうだけど、毎回参加者が必ず参加できるわけではない、(連続する稽古の時など)休みの人がいる場合、どんなふうに進めていくのか?」という質問がありました。
レイチェルは「毎回、毎回、積み重ねるように少しずつ全体を成長させていく。同じワークでも次の日はバリエーションを増やしてやってみる。初めての人にも何をやっているか理解できるし、2回目の人は深めることができる」と回答がありました。

一つ一つのワークはシンプルなのですが、参加者の様子をみて次のバリエーションに導いていくファシリテーション、そのことによってパフォーマンスに深みが出てくる様子に、とても心惹かれました。

 

今回のレポートはここまで!次回は最終日に行ったショーイングについて、レポートします。(おいかわたかこ)

【9月舞台公演情報解禁!】

レイチェルとのワークショップを通して出来た原案を元に、9月、舞台公演を開催します。ワークショップがどう作品に仕上がっていくのか!?ぜひみなさんの目で確かめてください。
一般チケットは3000円ですが、子連れ、シニア、学生、障害者割引などがあります。またガイドヘルパー生活保護受給者証をお持ちの方、中学生以下は無料でご覧いただけます。すべての人にアートを!詳細はこちら!ホームページへ!